荊冠の耀き〔赤江瀑〕

画像その夏、姫ケ崎の浜辺に藤屋優介、竹原国友、松田凛の三人は連日のようにやってきた。彼等は女を食べた。かといって好色というわけではない。海とも、太陽とも、夏とも分け隔てなく遊んだのである。彼等は人が浜に集まるから、出かけていくのだ。計り知れない未知への好奇心からだ。ある日、岩場ぞいを潜っていた国友が拳銃をみつけた…(荊冠の耀き)
青年期のあやうい美を描く表題作『荊冠の耀き』他、赤江美学の結晶九篇を収録。

レベルの高い作品の揃う短編集だと思いますが、表題作が好きになれなくて読み進めるのがしんどかったです。
表題作の『荊冠の耀き』は、メインの女たらし三人組にまったく魅力を感じなくて共感できなかったのですが、“ろくでなしのドキュ三人組の夏休み”も赤江氏の手にかかると“輝ける夏の一瞬”“美しく儚い青春”に変わるのだなぁと感心しながら読みました。

おもしろいと思ったのは『午睡の庭』『鏡の中空』『二枚目の首』の三編で、特にハマったのが『午睡の庭』でした。
(完成度は、『鏡の中空』『二枚目の首』の方が高いと思います)

『午睡の庭』のかんたんな粗筋を。
毎年金木犀の咲く時期になると、篤典は伊左武の家に足しげく通うようになる。
ある日、伊左武は篤典の金木犀の花を使った痴態を盗み見てしまった。
それを篤典も感じていたのか、全く隠さなかった。
突然、その篤典が死んだ。何故、彼は命を断たねばならなかったのか―?
篤典は服毒自殺をしてしまうのですが、その真相はわからぬまま終わってしまう。

もう思いっきり腐女子目線で読んでしまった話でした。
こう書くと安くくさく思われてしまいそうで心外ですが、お高く止まらずに潔く邪な目線で読んだ方がハマる話です。
日本にある金木犀が雄株しかないという事を、この短編で初めて知りましたよ。
“雌雄異株であるが、日本では雄株しか入っていないので結実しない”
性的に未分化な青年期の危うさを“結実しない”金木犀に託して表現した物語なのでしょう。

「青少年期は性的に未分化なので、同性愛に近い友情を育みがちになる」と言っていたのは、確かビートたけしだったと思います。
(『キッズ・リターン』って、そういう内容の映画ですよね)
竹宮恵子の『風と木の詩』でジルベールが愛用していた香水「シオン・ノーレ」は金木犀の香りなんですよね。(「シオン・ノーレ」という香水は竹宮先生の創作だそうです)

こういう事を次々に思い出すと『午睡の庭』の物語がますます意味深に感じる…。

荊冠の耀き〔赤江瀑〕
荊冠の耀き
午睡の庭
水恋鳥よ
夜な夜なの川
鏡の中空
二枚目の首
黒衣の渚
空華〈くうげ〉の森
四月に眠れ

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